
【2025年12月施行】改正建設業法完全ガイド|標準労務費・契約変更条項で建設業界はこう変わる
執筆者:行政書士 伊敷 紀巳雄
目次
- はじめに:2025年12月12日、建設業法が完全施行されました
- 改正建設業法の3つの重要ポイント
- 【最重要】標準労務費とは?建設業者が知るべき全知識
- 契約変更条項の義務化:契約書に必ず記載すべき内容
- 原価割れ契約の禁止:受注者の義務と罰則
- 工期ダンピング対策の強化:著しく短い工期の禁止
- 見積書作成の新ルール:内訳明示が必須に
- 建設業者が今すぐ取るべき5つの対応策
- Q&A:よくある質問と行政書士からのアドバイス
- まとめ:改正法への対応は行政書士にお任せください
1. はじめに:2025年12月12日、建設業法が完全施行されました
建設業界の皆様、こんにちは。行政書士の伊敷 紀巳雄です。
2025年12月12日、**『建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律』**が完全施行されました。
この改正は、建設業界が長年抱えてきた構造的な課題——技能労働者の処遇改善、長時間労働の是正、人手不足への対応——を解決するための大きな一歩です。
しかし、改正内容は多岐にわたり、特に**『標準労務費』、『契約変更条項』、『原価割れ契約の禁止』**など、建設業者の日常業務に直結する重要な変更が含まれています。
『知らなかった』では済まされない——この改正に対応できていない建設業者は、行政処分や指名停止のリスクに直面する可能性があります。
本記事では、行政書士の立場から、改正建設業法の重要ポイントと建設業者が今すぐ取るべき対応策を、分かりやすく徹底解説いたします。
2. 改正建設業法の3つの重要ポイント
2025年12月12日に施行された改正建設業法の柱は、以下の3つです。
ポイント1:標準労務費(労務費に関する基準)の導入
国土交通省が定める『労務費に関する基準』(通称:標準労務費)が導入されました。
【何が変わるのか?】
・著しく低い労務費での見積もり・契約が禁止
・公共工事設計労務単価を基準に、適正な労務費を確保
・発注者・受注者ともに、労務費を『もらえないから払えない』から『払うべきだから請求する』へ意識改革
【対象】
・元請業者と下請業者の契約
・発注者と元請業者の契約
・すべての建設工事(公共工事・民間工事)
【施行日】
2025年12月12日
ポイント2:契約変更条項の義務化
請負契約書に『契約変更の方法』を明記することが義務化されました。
【何が変わるのか?】
・契約後の資材価格高騰や労務費の変動に対応するため、契約変更の方法を契約書に記載することが必須
・『口頭での変更合意』はNG、書面での明記が必要
【対象】
・すべての建設工事の請負契約
【施行日】
2025年12月12日(※一部2024年12月から先行施行)
ポイント3:原価割れ契約の禁止
受注者が『正当な理由なく』原価を下回る請負代金で契約することが禁止されました。
【何が変わるのか?】
・受注者は、労務費・材料費・経費を積算し、原価割れしない請負代金で契約する義務
・『赤字覚悟で受注』は建設業法違反に
【対象】
・すべての建設業者(元請・下請問わず)
【施行日】
2025年12月12日
3. 【最重要】標準労務費とは?建設業者が知るべき全知識
3-1. 標準労務費(労務費に関する基準)とは?
標準労務費とは、国土交通省の中央建設業審議会が定めた『建設工事に従事する技能労働者の賃金を適正に確保するための基準』です。
法律上は、改正建設業法第19条の2に基づき、『労務費に関する基準』として2025年12月2日に中央建設業審議会が決定・勧告しました。
【標準労務費の目的】
✅ 技能労働者の賃金を適正に確保
✅ 労務費を『発注者→元請→下請→技能労働者』まで確実に行き渡らせる
✅ 不当に低い労務費での契約を防止
3-2. 標準労務費の計算方法
標準労務費は、以下の計算式で算出されます。
【計算式】
標準労務費 = 公共工事設計労務単価(円/人日) × 歩掛(人日/施工量) × 施工量
【用語解説】
・公共工事設計労務単価:国土交通省が毎年3月に発表する、職種別・地域別の労務単価
・歩掛(ぶがかり):1単位の工事を施工するのに必要な労働時間(人日)
・施工量:工事の数量(例:型枠100㎡)
【具体例:東京都の土木型枠工】
・公共工事設計労務単価:28,000円/人日
・歩掛:0.309人日/㎡
・施工量:100㎡
→ 標準労務費 = 28,000円 × 0.309 × 100㎡ = 865,200円
3-3. 国土交通省が公表している基準値
国土交通省は、2025年12月時点で13職種分野・99種類の基準値を公表しています。
【公表されている職種(一部)】
・土木型枠工
・建築型枠工
・鉄筋工
・とび工
・左官
・配管工
・電気工
・大工
・塗装工
【基準値の内容】
・都道府県別の労務単価
・歩掛(標準的な作業量)
・施工条件(作業難易度など)
【確認方法】
国土交通省『労務費に関する基準ポータルサイト』(参考リンクは文末にまとめています)
3-4. 標準労務費を下回る契約は違法か?
結論:『著しく下回る』場合は違法です。
改正建設業法第19条の2では、以下のように規定されています。
『注文者及び受注者は、請負代金のうち労務費に相当する部分の額が、労務費に関する基準を著しく下回ることとなる請負契約を締結してはならない。』
【ポイント】
・『著しく下回る』の基準は、今後の行政指導や判例で明確化される見込み
・現時点では、標準労務費の80%以下が目安とされる
【違反した場合の罰則】
・国土交通大臣または都道府県知事による指示・勧告
・悪質な場合は営業停止処分
・公共工事の指名停止措置
3-5. 標準労務費の適用範囲
【適用される契約】
・元請業者と下請業者の契約
・発注者と元請業者の契約
・公共工事・民間工事の両方
【適用されない契約】
・建設資材の売買契約
・設計業務委託契約(建設工事でないため)
4. 契約変更条項の義務化:契約書に必ず記載すべき内容
4-1. 契約変更条項とは?
契約変更条項とは、契約締結後に資材価格の高騰や労務費の変動が生じた場合、請負代金や工期を変更する方法を定めた条項です。
改正建設業法第19条第1項第10号の2により、請負契約書に『変更方法』を記載することが義務化されました。
【義務化の背景】
・近年、資材価格の高騰や労務費の上昇が頻発
・契約後に『価格転嫁できない』ことが、下請業者の経営を圧迫
・契約変更のルールを明確化し、円滑な協議を促進
4-2. 契約書に記載すべき内容
【必須記載事項】
- 変更事由:どのような場合に契約変更するか
例:資材価格が10%以上変動した場合 - 変更方法:どのように変更を協議・決定するか
例:受注者が書面で変更を申し出、7日以内に協議 - 変更手続き:変更契約書の作成方法
例:変更契約書を作成し、双方が署名・押印
【記載例】
『資材価格または労務費が契約時から10%以上変動した場合、受注者は書面により変更を申し出ることができる。注文者は申し出を受けた日から7日以内に協議に応じ、変更契約書を作成する。』
4-3. 国土交通省の標準約款を参考に
国土交通省は、2025年12月2日に『建設工事標準請負契約約款』を改正し、契約変更条項のモデルを公表しています(参考リンクは文末)。
4-4. 契約変更条項がない場合の罰則
【罰則】
・建設業法第19条違反として、国土交通大臣または都道府県知事による指示・勧告
・悪質な場合は営業停止処分
・公共工事の指名停止措置
5. 原価割れ契約の禁止:受注者の義務と罰則
5-1. 原価割れ契約とは?
原価割れ契約とは、受注者が労務費・材料費・経費の合計(=原価)を下回る請負代金で契約することです。
改正建設業法第19条の3第2項により、受注者は**『正当な理由なく』原価割れ契約を締結してはならない**と規定されました。
5-2. 『正当な理由』とは?
【正当な理由の例】
・継続的な取引関係の維持のため、利益を度外視して受注
・余剰人員・機械の有効活用のため
【正当な理由にならない例】
・『仕事がないから赤字でも受注』
・『次の仕事を受注するため』
5-3. 原価の算定方法
受注者は、以下を適切に積算し、原価を算定する必要があります。
- 労務費:標準労務費を基準に算定
- 材料費:市場価格を反映
- 経費:現場管理費・一般管理費など
【注意点】
・『どんぶり勘定』はNG
・見積書に内訳を明示する必要あり
5-4. 罰則
【罰則】
・建設業法第19条の3第2項違反として、国土交通大臣または都道府県知事による指示・勧告
・悪質な場合は営業停止処分
6. 工期ダンピング対策の強化:著しく短い工期の禁止
6-1. 工期ダンピングとは?
工期ダンピングとは、通常必要な工期を大幅に短縮した契約を結ぶことです。
改正建設業法第19条の4により、注文者は**『著しく短い工期』での契約を締結してはならない**と規定されました。
6-2. 『著しく短い工期』の基準
【基準】
・国土交通省が定める『工期に関する基準』を参考
・施工条件・作業内容に照らして、適正な工期を確保
【ポイント】
・『とにかく早く』はNG
・工期短縮の場合は、労務費・機械経費の増額が必要
6-3. 罰則
【罰則】
・建設業法第19条の4違反として、国土交通大臣または都道府県知事による指示・勧告
・悪質な場合は営業停止処分
7. 見積書作成の新ルール:内訳明示が必須に
7-1. 見積書の記載事項
改正建設業法第20条により、建設業者は見積書に以下を記載する努力義務が課せられました。
【記載事項】
- 労務費:職種別・工種別の内訳
- 材料費:材料の種類・数量・単価
- 経費:現場管理費・一般管理費など
【ポイント】
・『一式〇〇万円』はNG
・できる限り詳細な内訳を記載
7-2. 見積書のフォーマット
国土交通省は、標準的な見積書のフォーマットを公表しています(参考リンクは文末)。
8. 建設業者が今すぐ取るべき5つの対応策
対応策1:標準労務費の確認と見積書の見直し
【やるべきこと】
- 国土交通省のポータルサイトで、自社の工事に該当する標準労務費を確認
- 現在の見積書が標準労務費を下回っていないかチェック
- 下回っている場合は、見積書を修正
【行政書士のサポート】
・標準労務費の計算代行
・見積書フォーマットの作成
対応策2:契約書の契約変更条項を追加
【やるべきこと】
- 既存の契約書ひな形に、契約変更条項を追加
- 国土交通省の標準約款を参考に、変更事由・変更方法を明記
- 今後の契約から、新しい契約書を使用
【行政書士のサポート】
・契約書のリーガルチェック
・契約変更条項の作成
対応策3:原価割れ契約の防止体制を構築
【やるべきこと】
- 見積書作成時に、労務費・材料費・経費を適切に積算
- 原価割れしないよう、社内ルールを整備
- 『赤字覚悟で受注』をしない方針を明確化
【行政書士のサポート】
・原価管理の社内ルール策定支援
・見積書チェック体制の構築
対応策4:工期の適正化
【やるべきこと】
- 国土交通省の『工期に関する基準』を確認
- 工期短縮の場合は、労務費・経費の増額を見積もりに反映
- 発注者に対し、適正工期の必要性を説明
【行政書士のサポート】
・工期設定のアドバイス
・発注者への説明資料作成
対応策5:行政書士に相談
【行政書士ができること】
✅ 改正建設業法への対応状況の診断
✅ 標準労務費の計算・見積書の作成
✅ 契約書のリーガルチェック・作成
✅ 建設業許可の更新・変更手続き
✅ 国土交通省・都道府県への報告書作成
【相談のタイミング】
・『うちの契約書は大丈夫?』と不安に思ったとき
・国土交通省や都道府県から指導を受けたとき
・新しい契約書を作りたいとき
9. Q&A:よくある質問と行政書士からのアドバイス
Q1. 標準労務費は必ず守らないとダメですか?
A. 『著しく下回る』場合は違法です。
現時点では、標準労務費の80%以下が目安とされています。ただし、施工条件や作業内容によっては、標準労務費を下回る合理的な理由がある場合もあります。
不安な場合は、行政書士にご相談ください。
Q2. 既存の契約書に契約変更条項がない場合、どうすればいい?
A. 今後の契約から、契約変更条項を追加してください。
既存の契約については、発注者と協議し、覚書や変更契約書で契約変更条項を追加することをお勧めします。
Q3. 見積書に内訳を書くのが面倒です。『一式』ではダメですか?
A. できる限り詳細な内訳を記載してください。
改正建設業法では、労務費・材料費・経費の内訳を記載する努力義務が課せられています。『一式』では、標準労務費を確保しているか確認できないため、行政指導の対象になる可能性があります。
Q4. 下請業者が『安くやる』と言っているのに、発注できないのですか?
A. 下請業者が原価割れ契約を結ぶことは違法です。
改正建設業法では、受注者(下請業者)が原価割れ契約を結ぶことが禁止されています。元請業者としては、下請業者が適正な利益を確保できる請負代金で発注してください。
Q5. 改正法への対応が遅れた場合、どうなりますか?
A. 営業停止処分や指名停止のリスクがあります。
改正建設業法に違反した場合、国土交通大臣または都道府県知事による指示・勧告、悪質な場合は営業停止処分が科せられる可能性があります。また、公共工事の指名停止措置を受けることもあります。
早めに行政書士に相談し、対応を進めることをお勧めします。
10. まとめ:改正法への対応は行政書士にお任せください
2025年12月12日に完全施行された改正建設業法は、建設業界に大きな変革をもたらします。
【改正の3つの柱】
✅ 標準労務費の導入 → 適正な労務費の確保
✅ 契約変更条項の義務化 → 資材高騰への対応
✅ 原価割れ契約の禁止 → 健全な経営の実現
これらの改正は、技能労働者の処遇改善と建設業界の持続可能な発展を目指すものです。
しかし、対応が遅れると、営業停止や指名停止のリスクがあります。
行政書士 伊敷 紀巳雄は、建設業許可を専門とし、改正建設業法への対応を全面的にサポートいたします。
【ご提供するサービス】
✅ 標準労務費の計算・見積書の作成
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✅ 建設業許可の更新・変更手続き
✅ 国土交通省・都道府県への報告書作成
✅ 改正法への対応状況の診断
『うちの会社は大丈夫かな?』と少しでも不安に思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
建設業界の未来を、一緒に創りましょう。
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